溶けろよ、心

「橘のお母さんは、病気のことを知ってた。


志賀が口止めしたらしい。橘には言わないでくれって」


「なんでそんなっ……!」

悔しくて、涙が溢れそうになる。



町田くんは、そこまでは知らないとでも言うふうに「さあね」と言った。

「でも、俺に一つだけ言えるのは……」


町田くんがブランコから立ち上がる。

カシャンと音を立てるブランコ。


そして町田くんは、私の耳に口を近づけて、囁いた。


「男っていうのは、好きな女に弱いところを見せたくないんだ」
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