溶けろよ、心

「……好きな……?それはないよ」


嘘だ。そんなわけない。

これはただの町田くんの憶測。


町田くんは、この前みたいに私の前の柵に座った。

「余裕であると思うけど」

「何を根拠に」

町田くんがふうっと息をつく。

「橘、Answerの新曲買った?」

そういえば、昨日が発売日だったっけ。


「買ってない」

「俺は買った」

だ、だからなんなんだ……?


「聞かせてあげるよ」

町田くんはそう言って、ポケットから音楽プレーヤーとイヤホンを取り出して、私に差し出した。


それをおずおずと受け取って、耳にはめる。
< 243 / 334 >

この作品をシェア

pagetop