溶けろよ、心
「もしもし、志賀?」
私から受け取ったケータイで、町田くんはまた何やら晴斗に話しかけている。
「お前らなあ。電話でもメールでも、好きなだけすりゃいいだろ」
えっ?
突然何を言い出すの、町田くん。
私たち、たった今円満なお別れをしたはずなのに。
「でもじゃねえよ。お前はもう、あの頃とは違う。今の仕事は、金のためだけにやってるんじゃねえだろ?」
昨日東京で見た、晴斗の顔を思い出した。
プロとしてのキリッとした顔。ファンに向ける嬉しそうな笑顔。
『俺、この仕事好きだ』
上京する前日、晴斗が私に言った言葉だ。
あの時は強がって言ったのかもしれないけれど、今はもうこの言葉が真実になっていたんだ。