溶けろよ、心

「もしもし、志賀?」

私から受け取ったケータイで、町田くんはまた何やら晴斗に話しかけている。


「お前らなあ。電話でもメールでも、好きなだけすりゃいいだろ」










えっ?
突然何を言い出すの、町田くん。

私たち、たった今円満なお別れをしたはずなのに。


「でもじゃねえよ。お前はもう、あの頃とは違う。今の仕事は、金のためだけにやってるんじゃねえだろ?」


昨日東京で見た、晴斗の顔を思い出した。

プロとしてのキリッとした顔。ファンに向ける嬉しそうな笑顔。



『俺、この仕事好きだ』

上京する前日、晴斗が私に言った言葉だ。

あの時は強がって言ったのかもしれないけれど、今はもうこの言葉が真実になっていたんだ。
< 252 / 334 >

この作品をシェア

pagetop