溶けろよ、心
「それにしても、あいつムカつくなあ……」
さっきの、あいつとの電話を思い出していた。
『お前俺からの電話は出んのな』
『うるせえよ。お前真由に言ったのかよ』
『あーはいはい。まあいいや、真由に代わるね』
"真由"
町田は確かにそう言った。
真由を呼び捨てにするのは、俺と家族くらいだったのに。
めちゃくちゃムカつく。
『ちょちょちょ、ちょっと待って!』
『はーやくしろー』
『は、はい!どんとこい!』
町田から真由に電話が渡るとき、かすかに聞こえた会話。
なんだよ、真由も町田に心開いちゃってんのか。
ハキハキ喋れてる。
めちゃくちゃムカつく。
「ムカつくとか言いながら笑ってんじゃん、晴斗」
「あーほんとだー!」
メンバーがニヤニヤしながらからかってきた。
「うるせえって、こっち見んな!」
フードを被って寝たフリをすることにする。
やっぱりこのグループは、居心地がいい。
真由、見てろよ。
俺たち絶対トップアイドルになるから。