溶けろよ、心





「プログラム5番、400メートルリレー」


盛り上がるグラウンドに、アナウンスが響き渡る。



藤山くんだ……。

やっぱりいい声。



トラック内には、出場選手が真剣な表情で揃っている。

私は、藤山くんの心地いいアナウンスを聴きながら彼らをクラスの待機席でじっと眺めていた。



「橘」

突然、空席だったはずの隣に気配を感じてビクリと驚く。


横を見ると、そこにいたのは町田くんだった。


「び、びっくりした……町田くん」


「よっ」


町田くんは小さく笑った。

だけど、私の目は見ない。


少し寂しそうに、足を動かしながら自分の靴ばかり見つめている。

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