溶けろよ、心
「どうかした?」
一昨日の別れ際と同じ表情。
私は心配になって声をかけた。
「え?何が?どうもしないよ」
町田くんがこっちを向いて笑う。
だけどやっぱり目は合わない。
どうしてなんだろう?
「……志賀とは、連絡とった?」
町田くんがズボンのポケットに手を突っ込みながら、静かに言った。
「あ、うん。メールだけ。
今は忙しい時期だから、時間できたら電話するって」
昨日の朝、晴斗からメールが来てた。
CDを出したばかりで、今はすごく忙しいらしい。
「あーそう。よかったじゃん」
町田くんはそう言いながらグラウンドの方を見て、くしゃりと前髪をいじる。
「うん。町田くんのおかげ。ありがとう」
私は、隣に座った町田くんの方に体を向けて、頭を下げた。
町田くんがいなかったら、晴斗と話す勇気なんて出なくて、疎遠になってしまっていたと思う。
そんなのは絶対に嫌だった。
町田くんのおかげで、前に進めたんだ。