溶けろよ、心

「どうかした?」


一昨日の別れ際と同じ表情。

私は心配になって声をかけた。



「え?何が?どうもしないよ」



町田くんがこっちを向いて笑う。

だけどやっぱり目は合わない。


どうしてなんだろう?



「……志賀とは、連絡とった?」


町田くんがズボンのポケットに手を突っ込みながら、静かに言った。



「あ、うん。メールだけ。

今は忙しい時期だから、時間できたら電話するって」



昨日の朝、晴斗からメールが来てた。


CDを出したばかりで、今はすごく忙しいらしい。




「あーそう。よかったじゃん」


町田くんはそう言いながらグラウンドの方を見て、くしゃりと前髪をいじる。



「うん。町田くんのおかげ。ありがとう」



私は、隣に座った町田くんの方に体を向けて、頭を下げた。



町田くんがいなかったら、晴斗と話す勇気なんて出なくて、疎遠になってしまっていたと思う。


そんなのは絶対に嫌だった。


町田くんのおかげで、前に進めたんだ。

< 260 / 334 >

この作品をシェア

pagetop