溶けろよ、心
「ん」
町田くんは照れたように返事をして、私の頭にポンと手を当てた。
そして、ふぅっと息を吐きながら立ち上がった。
「橘、何か競技出るの?」
「ううん、何も出ない。練習に参加してないから」
「サボったからな」
町田くんがはははっと笑った。
「これからはサボんないから!」
馬鹿にしてくる町田くんの腕を軽く叩く。
「はいはい」
町田くんはそんな私を見て、呆れたように笑った。
なんか、私をこうしてからかってくる感じ……既視感がある。
「町田くんって、晴斗に似てる」
私が唐突にそう言うと、町田くんは目を丸くした。
「それ、は……なんだろ」
町田くんは戸惑ったようにこめかみの辺りを掻いた。
「喜んでいいのか、わかんないね。
あんまり嬉しくないかも」
町田くんが笑顔を作ったのが分かった。
胸がチクリと痛む。
膝の上の手をぐっと握りしめた。