溶けろよ、心

「ごめん……」



「え?いや、深い意味はないよ!
ただ、あいつと似てんのはなんか嫌だな〜みたいな」



町田くんはまた目を細めて不自然に笑った。


どうして私はこの人にこんな顔をさせているの。



「じゃ、俺そろそろ行くわ」


町田くんは手を挙げて緩く振った。


何か、ちゃんとはっきりさせないといけないことがある気がする。



「ま、待って!」



私が引き止めると町田くんは振り返って、「橘!」と呼んだ。


一昨日、"真由"と呼ばれたことを何故か思い出して、顔が熱くなる。



「俺、リレー出るから、見てて!」


町田くんは白い歯を見せて笑い、言い残して走って行ってしまった。

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