溶けろよ、心
「うわ〜、なんだよ」
私の隣で、町田くんは額を抑え、「勘違いかよ、恥ずかし」と言いながら頭を抱えている。
「でも……、よかった」
町田くんは、真っ赤になった耳をそのままに私を見て笑った。
私は何も言えなかった。
何も言葉が思いつかないくらい、心臓のドキドキが気になったからだ。
「そろそろ橘ん家着くな」
無言のまま私の家に着いてしまう。
ドキドキする胸の苦しみは、苦しいはずなのにどうしてか心地いい。
だから、家に着いてほしくなかった。