溶けろよ、心
数学を諦めて英語の参考書に手を伸ばした時、枕元にあったケータイが鳴った。
電話だ。
こんな朝7時なんて早い時間に…誰?
画面に映った名前は、晴斗だった。
「もしもし?真由」
「もしもし?」
声を聞くのは、数日ぶりか。
昔から聞き馴染みのあるその声は安心するし癒される。
「ごめんな、朝早く。撮影の前に時間が空いたから」
全然ごめんなんて思ってなさそうな淡々とした言い方が、むしろ嬉しかったりする。
「大丈夫。起きてたから」
「へー。早いじゃん」
「だって受験生だもん」
「あ、そっか。頑張れ」
私は素直に頑張ると言えない。
勉強についていけず、頑張ろうにも進まないから。
「んー…」
私が唸りともとれる返事をすると、電話の向こうで晴斗が笑った。