溶けろよ、心
「まじで!そっかーありがとう!」

今日、るいちゃん以外の人と話したの初めてだな。今日とかじゃないかも。何日ぶりだろう?
私は少し頷いて本に目を落とした。もう話は終わったと思った。のに。

「ねえ、もしかして放送部の人?」

びっくりした。知っているなんて思わないし。
先月引退したばかりの放送部。話すのが好きな私にとってすごく幸せな場所だった。入部するのは勇気がいったけど。

「あ、うん…」

今度は目を見て頷けた。

「やっぱり!火曜と…金曜!放送してたよね!俺あの声すげー好きでさ!いつもちょっと楽しみにしてた」

びっくり!びっくり!そんな人がいるなんて。私の声を好きだって言ってくれる人がいるなんて。
言葉が出ない。嬉しいなあ。

「あ、ありがとう…」

キラキラした笑顔を私に向けたままの彼。明るめの茶髪に笑顔が良く似合う。
セミロングの黒髪を後ろで束ねただけの私とは、雰囲気が正反対だ。
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