溶けろよ、心




「じゃあ、またな。わかんないとこあったらいつでも教えるから」


送って行こうかと言ったら、真由は首を横に振った。

だから俺たちは校門で別れることにした。



「うん。今日は本当にありがとう」


真由は笑顔でそう言った。

夕日に照らされた彼女が、綺麗だと思った。



俺は手を振って、自分の家への道を歩き始めた。

今日、後半はなんだか気まずい空気が流れていて会話がぎこちなかったけれど、それでも楽しかったな。


真由の恥ずかしそうに火照った顔がかわいくて、それだけでもう十分だった。

それを今日一日独り占めできただけで、十分だった。



真由。

今日は何度もその名前を呼んだ。

格好つけて、何でもないふりをして。
本当は、呼ぶたびに緊張しまくってたくせに。



少しは真由の心に近づけたんだろうか…。








ギュッ。

急に右の手首を掴まれた感触。

びっくりして後ろを振り返る。

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