溶けろよ、心
「町田隼人。俺の名前。名前、教えてくれる?」

優しい声で町田くんが尋ねた。

「あ…橘真由(たちばなまゆ)」

出た声は、思ったよりも小さかった。聞こえたかどうか心配になった。

「橘ね。友達になってよ」

「は、はい…」

今日初めて話したのに。ほとんど言葉は交わしてないのに。お互いのこと、何も知らないのに。
彼の笑顔と声にどうしようもなく安心する。
町田くんはいい人なのだと思った。私を助けてくれる気がした。

「バイバイ!また明日」

生きてる意味が見当たらなくて、どうしていいかわからない不安な日々に、突然現れた町田くん。
湿度が高くて、むしむしベタベタした夏の日みたいな私の世界。今日、爽やかな風が吹いた。
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