溶けろよ、心
着いたのは、前にも来た中庭のベンチ。
町田くんが座る。

私は立ったまま、
深く頭を下げた。

「き、昨日はごめん!」

「…俺何かされたっけ?」

町田くんは立ち上がって、私の顎をくいっと上に向かせた。

距離が……近い。

「すぐ謝るの、禁止ね」

町田くんはそう言うと、またベンチに座り直してお弁当を広げる。

心臓がバクバクいってるのが聞こえる。あんな町田くんの表情、見たことない。
いつも私の目を見てくれるけど、さっきも見てくれていたけど、明らかに違った。鋭くて、でもどこか柔らかいような……。
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