溶けろよ、心
「つか、橘に仲良い男がいたことに驚き」

町田くんが嫌味っぽく言う。男って言い方、なんか嫌だ。

「別に、ただの後輩だよ。変な風に見ないでよ」

町田くんの態度につられて私も嫌味っぽくなる。


あ、たこ焼き、最後の一個だ。

「食べていいよ」

私が言った。

「うん」

町田くんがたこ焼きを口に入れる。
それを見て、私は容器と箸をまとめた。

「捨ててくるね」

そう言って、私は立ち上がった。小走りでゴミ箱へ向かおうとすると、

ぐいっ。

町田くんが私の手首を掴む。

「なんで一人で行くんだよ。俺も行く」

町田くんの真剣な眼差しには逆らえない。
私は黙って頷いた。
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