溶けろよ、心
気づいた町田くんが私を心配そうに見つめている。

もう大丈夫。このくらい平気。



「ねえ、そういえば、貸した本読んだ?」

「へっ?ああ……あ、読んだよ。今度返す」

私が普通なことに町田くんは少しうろたえていた。

「でしょ!主人公もかっこいいけど、敵側もなかなかイケてるよね」

「それ!最後なんて鳥肌止まらなかった」

「ね!」


晴斗の歌は気になるし、まだまだ忘れたわけじゃない。ずーっと一緒にいたんだから、それは当たり前で。受け止めることにした。晴斗がいない現実も、たまに泣いちゃう私も。

私は、強くなった。
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