もし君に好きと言えたなら
突然の告白に、驚きを隠せず、思わず小さく「え」と声を漏らした。
彼女は俺から視線をそらし、俯く。寒さからか、緊張からか分からないが、小さな肩が少しだけ震えている。
そんな彼女の様子を見て、少しずつ頭を整理し、いつものように何て断ろうか言葉を選ぶ。
サッカーに夢中だったあの時。
俺は、彼女という存在に興味なかった。デートだの束縛だのめんどくさいと思っていたから。
だからいつもどおり断ろうとしたときだった。
「私…工藤君の優しくて、面白くて…サッカー頑張る姿が好きなの。私じゃ、ダメですか…?」
誰に告白されても、何を言われても心が動いたことなんてなかった。
だって告白の台詞なんていつも“一目見たときから好きでした”のことって台詞ばっかり。
「…」
この瞬間、俺の中で今までとは違う何かが動いたのは確かだった。
でも、正直言えば俺は何も彼女の事を―――片瀬さんのことを知らない。
話したことも少なければ、中学校だって同じじゃない。
「ごめん…付き合えない」
だから彼女がどうして俺を好きになったのか、疑問にさえ思ってしまうし、その台詞は本当なのかと疑いたくなってしまう。
だから俺はいつも通り、はっきりとそう答えた。
「ごめんなさい…っ」
別に告白してきた彼女が悪いわけではない、むしろ断る俺のほうが悪いのに謝ってきた彼女の瞳は少し潤んでいた。