野良ネコと…………ひなたぼっこ
お昼時の公園は…それ程人はいない。

まぁ~、この暑さじゃあなぁ。

木陰にいくと、思った程暑くなく涼しいとは言えないが

そこそこ風が通る。

「先生~。シート、ここでいい??」

おおはしゃぎの唯ちゃんは、本当に楽しそうだ。

「唯ちゃん、手を出して。」

オレの手の上に置くように手を出すと『オテ』をされた。

クスクス笑って「反対だよ。」というと………

左右逆に…………。

う~ん。

逆って………裏返しって意味だったんだけどなぁ~。

「逆っていうのは、こっちだよ。」と手のひらを上に向けて

手の上に、イチゴのキーホルダーが付いた鍵を置いた。

「鍵???」

「そう………唯ちゃんの鍵。
これを使って、いつでもおいで。」

そう……オレの決心…………。

唯ちゃんを『本当に』一人にさせない。

今までは……

唯ちゃんの家族の問題だからと……………遠慮してきた。

唯ちゃんとの将来を考えると、なおさら悪い印象を与えたくないから……。

でも、そうも言ってられなくなった。

お父さんと尋ちゃんのケンカと……家出。

お母さんの………出張の多さ。

一人になるっていうよりも…………一人の時間しかない。

おまけに、いつ帰って来るか…………あてもない。

それなら、精神的ではなく………実質、一人にしないようにしないと。

強引な方法を使っても………あの一人の家から連れ出さないと………

唯ちゃんがおかしくなってしまう。

「食器も揃ったし、あそこは………唯ちゃんとオレの家だよ。
淋しい時はもちろん!
淋しくなくても……いつでもおいで。一緒にご飯を食べよう。」

オレの言葉に、涙を流す唯ちゃん。

「喜んでくれた?だったら…………ごほうび!
あ~ん。」

唯ちゃんのプリンを見て、口を開けると………

この間の海では出来なかった、同じスプンでの半分こをしてくれた。

合鍵を渡した記念の日が…………

唯ちゃんの初めての……半分こ記念日になった。

少し照れくさいけど、鍵は渡せた。

次は………かなりの難関が予想されるけど………これをクリアしなければ……

本当の意味で、唯ちゃんを守ることが出来ない。

朝聞いた、1週間一人だったことを思うと………

殴られる覚悟も出来た。
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