野良ネコと…………ひなたぼっこ
「私の家には……客室が有ります。
唯さんには、そこを使ってもらおうと思っています。
…………正直に言いますと……
唯さんは、男の人と付き合うのは、初めてです。
私達は………キスもしていません。」

「でも……さっきプロポーズをしたって………。」

お母さんの戸惑いを感じる。

そりゃあ、そうだろう。

付き合って数ヵ月、いい大人がキスもまだって……
しかも、プロポーズをしたっていう。

「はい、でも…唯さんが良いというまで……そういった行為はしません。
たとえ結婚したとしても。」

「ええっと………」

言葉にならない声をあげて……考えこんでいる。

お父さんも流石に戸惑いを隠せず、オレと唯ちゃんを交互に見る。

「あのね。」

そんな中、口火を切ったのは唯ちゃん。

「先生……唯が大丈夫っていうまで……待ってくれてるの。
結婚は…『唯を一人にしないためにプロポーズしたから……
唯の気持ちがかたまるまで……待つよ。』って……。
唯のことを、本当に大切にしてくれてるの。」って。

「唯さんは…デートや友達と遊んでいても、遅くなることを嫌がります。
ご家族が帰られた時、誰もいないと寂しく思うからと。
一人の淋しさを誰より分かっているからだと………。
ただ、このままだと待つだけの時間を過ごしてしまうので…
許して頂けるのなら
私や友達といて、帰られる時に連絡してもらえたらと……。
できるだけ唯さんを一人にしたくないというのは
私はもちろん
幼稚園の友達の願いなんです。」

オレの話しに涙を見せるお母さん。

「言いにくいことを、ありがとう。
唯のこと………よろしくお願いします。」と頭を下げるお父さん。

この家族は大丈夫だと思った。

唯ちゃんの努力は、実を結ぶと…………。

安心して帰ろうと立ち上がった時

「これから、二人で話し合おうと思います。
唯をお願いしても良いですか?」と……。
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