龍使いの歌姫 ~神龍の章~
ティアが人間に変身する練習を始めて、約二時間。
ゼイルが指導をしてくれているが、レインとアルはその間、リンゴの木の下で座っていた。
「お前の師匠って奴が、もし居なかったらどうするんだ?」
「そしたら、また別の場所を探すよ」
「……やっぱり、そいつと一緒に暮らしたいからか?」
アルのどこか淡々とした声に、レインは首を振った。
「私、ここの皆が大好きだから。もし望むことが許されるのなら、これからもここで暮らしたい。……師匠に会いたいのは、ちゃんとお礼を言いたいのと、今まで教えてくれなかったことを教えてもらうため。後は」
レインは一度言葉を切ると、ニッコリと笑った。
「今度こそ『お父さん』って呼ぶためだよ」
「……そうか」
四年前から、変わらないその笑顔が、アルは好きだった。
素直なレインと違って、素直ではないアルは、それを伝えることが出来ないが。
(お前はそうやって、僕の隣で笑っていれば良い)
それだけが、今の自分の幸せだと言える。
レインがいて、ゼイルがいて、ティアがいて。龍族の仲間がいれば、自分は強くなれるから。
(僕は、自分が誰かを知らない)
ただ、実の両親に捨てられたことだけは知っている。長老から聞いて、両親は赤い髪に生まれた自分がいらなかったのだと。
けれども、涙など出てこなかった。
物心つく前は、自分も龍だと思い込んでいたくらいなのだ。
その後は、龍族と自分が違う生き物だと知り、暫く祠に閉じ籠って、長老や他の皆を随分困らせてしまった。
違うことが、酷く怖かった。でも、違っても良いのだと、レインがいて思えるようになった。
自分と同じ忌み子でありながら、それでも自分よりも前をちゃんと見て、しっかり立ち上がれる。
守ると決めたら、例え無謀だと分かっていても、危険に飛び込む。
そんなレインを、いつの間にかアルは好きになっていた。
(だから、僕はお前を守る)
レインがティアを命がけで守るように、自分もレインを何があっても守る。
そう、自分自身に誓った。
ゼイルが指導をしてくれているが、レインとアルはその間、リンゴの木の下で座っていた。
「お前の師匠って奴が、もし居なかったらどうするんだ?」
「そしたら、また別の場所を探すよ」
「……やっぱり、そいつと一緒に暮らしたいからか?」
アルのどこか淡々とした声に、レインは首を振った。
「私、ここの皆が大好きだから。もし望むことが許されるのなら、これからもここで暮らしたい。……師匠に会いたいのは、ちゃんとお礼を言いたいのと、今まで教えてくれなかったことを教えてもらうため。後は」
レインは一度言葉を切ると、ニッコリと笑った。
「今度こそ『お父さん』って呼ぶためだよ」
「……そうか」
四年前から、変わらないその笑顔が、アルは好きだった。
素直なレインと違って、素直ではないアルは、それを伝えることが出来ないが。
(お前はそうやって、僕の隣で笑っていれば良い)
それだけが、今の自分の幸せだと言える。
レインがいて、ゼイルがいて、ティアがいて。龍族の仲間がいれば、自分は強くなれるから。
(僕は、自分が誰かを知らない)
ただ、実の両親に捨てられたことだけは知っている。長老から聞いて、両親は赤い髪に生まれた自分がいらなかったのだと。
けれども、涙など出てこなかった。
物心つく前は、自分も龍だと思い込んでいたくらいなのだ。
その後は、龍族と自分が違う生き物だと知り、暫く祠に閉じ籠って、長老や他の皆を随分困らせてしまった。
違うことが、酷く怖かった。でも、違っても良いのだと、レインがいて思えるようになった。
自分と同じ忌み子でありながら、それでも自分よりも前をちゃんと見て、しっかり立ち上がれる。
守ると決めたら、例え無謀だと分かっていても、危険に飛び込む。
そんなレインを、いつの間にかアルは好きになっていた。
(だから、僕はお前を守る)
レインがティアを命がけで守るように、自分もレインを何があっても守る。
そう、自分自身に誓った。