龍使いの歌姫 ~神龍の章~
ジジナ草を作り続けることが出来なければ、竜を飼い慣らすことは出来ない。

翼だけ切っても無駄なことだ。魔力を持つ龍に、人が勝てるわけがないのだから。

「ジジナ草の代わりとなるものを作り出そうと、色々手を尽くしているらしいが、結局無駄なことだ。あれは、龍殺しの成分があって初めて作れる物だからな。偽物では、逆に竜を凶暴化させてしまうだろう。……まぁ、他にも原因はあるだろうが」

そこまで、わざわざこちらが調べる必要はない。アルは人間が龍を苦しめてきた分、同じように苦しめばいいと思っているからだ。

だが、レインの方はそう思えないらしく、悲しそうに手を握る。

「……最初の龍王様が現れる前は、神龍様が人間を支配して、龍王様が現れた後は、人間が龍や神龍様を支配する。どちらかが、どちらかを苦しめるなんて……悲しいな」

同じ生き物なのに、何故共に生きられないのだろう?

二つの民がいた頃のように、龍とか人間とか関係なく、一緒に生きられればとんなにいいかと思う。

レインは龍が大好きだし、龍の谷で暮らしたいとは思う。

だからと言って、アルのように人間が嫌いな訳ではない。自分勝手な人が多いが、優しい人も、確かにいるのだ。

そこで、ノノンの顔を思い出した。自分を好きだと言ってくれた、幼いがとても優しい女の子。

今、彼女はどうしているだろうか?

「……私、いつか龍と人が一緒に生きられる方法を見付けたいな。赤と白の民がいた頃は、仲良く出来たんだから、きっとまたそういう国が出来ると思う」

「……甘いな。今では龍と人間の間には、深い溝が出来ている。それを、そう簡単に変えられると思うか?」

アルの言葉に、レインは首を振る。

「簡単だとは思ってないよ。凄く難しいと思う。きっと何年もかかるかもしれない……けどね、私は私が死ぬその時まで、探し続けたいと思う。それが、今の私の夢かな」

「ティアは、レインとずっと一緒がいいの!だから、レインのお手伝いするの!」

大人しく二人の話を聞いていたティアが、右手をあげる。

「ふふっ。ありがとうティア!頼りにしてるよ」

「任せてなの!」

頭を撫でられて嬉しいティアは、にこにこ笑う。

「……お前がそう言うなら、僕も少しは手伝ってやってもいい。ただし、人間を許した訳じゃないからな。仕方なくだ」

相変わらず素直ではないアルに、ゼイルは呆れる。

『もう人間に対して怒りとか無いくせに。レインが来てから、やたら他の人間に敵意向けなくなったし、愛のちか―』

「だ・ま・れ」

『いっっっっだ!!』

ゼイルとアルの何時ものやり取りに、レインとティアは笑っていた。
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