龍使いの歌姫 ~神龍の章~
ティアが生まれ、レインが育った小屋が見えてくると、近くの開けた場所へゼイルは降りる。

そして、レイン達が背中から降りたのを確認すると、

ゼイルの体がキラキラと光った。

「「わっ!」」

レインとティアが、眩しさに目を瞑る。

「……っと。これでいいか」

龍の時よりも、もう少しハッキリした音質で喋るゼイルは、まだ目を瞑っている二人を見る。

「ティア?姉貴?どうした??」

「ゼイル……なの?」

先に目を開けたレインは、アルの隣に立っている青年に目を見開く。

アルよりも背が高く、銀色の短い髪を後ろで一本結びにした、銀色の瞳の青年は、腰に手を当てて胸を張る。

「おう!」

「ゼイル、人間になってるの!ティアとお揃いなの!」

「お揃いだぞ!」

嬉しそうに笑いながら、ティアはゼイルと手を繋ぐ。

因みにゼイルは、人間の恋人同士みたいだなどと喜んで凄く嬉しそうだが、レインやアルから見たら、完全に微笑ましい兄妹の光景にしか見えない。

ティアの見た目や言動が幼いせいかも知れないが、いまいちゼイルが、ティアに対して緊張しているとかそう言うのが見えないからだ。

勿論、ドキドキはしてるだろうが、嬉しさと妹を思いやるような気持ちがまだ上なのだろう。

(……僕のことをどうこう言える立場じゃ無いだろ)

アルは心の中でゼイルに呆れると、レインを促す。

「日がくれる前に行くぞ」

「うん。二人とも、行くよー!」

アルにレインは頷くと、後ろの二匹(今は人なので二人だろうか?)に声をかけた。

「はーい!なの!」

「了解!」

ティアは元気良く片手を上げ同意を示し、ゼイルは敬礼する。

因みに手は繋いだままだ。

レインは微笑ましく思いながらも、少しだけ羨ましいと思った。

(小さい頃は、姉さんに手を繋いでもらって、師匠と暮らしてた時は、師匠が手を繋いでくれた)

それを懐かしく思うと、少しだけ寂しかった。

「……行くぞ」

「え?……ア、アル?」

そんなレインの気持ちを知ってか、アルはレインの手を握ると、そのまま引っ張っていく。

「気の済むまで、繋いでてやる」

「……ありがとう!」

少しだけ呆けてから、レインは笑った。
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