龍使いの歌姫 ~神龍の章~
始まりのお話
「……そして、私の髪が赤であることにも、違和感を持ってなかった。……私は、今の私は誰なのか……分からない」

ティアナに育てられた記憶と、城で育った両方の記憶を持つ自分は、一体何者だというのだろうか。

「……取り敢えず、お前の事情は分かった。……一言言っていいか?」

「……うん」

「それがどうした」

「え?」

アルの言葉の意味が分からず、レインは間の抜けた声を出した。

「お前はお前だろ。エレインと名乗りたいならそうすればいいし、レインと名乗りたいならそうしろ。だがな、どっちもお前であることに代わり無いだろ。お前の好きに決めれば良い」

「……私の、好きに?」

呆然と呟いたレインに、アルは頷く。

「どっちももう過ぎたことだろ。それを今さらぐたぐた言ってどうする?城で育ったことも、ティアナに育てられたことも、どっちも本当のことだろ。その両方を合わせて、今のお前がいるんだろ」

一度言葉を切ると、アルはため息を吐く。

「どんな過去があろうと、レインはレインのままだ。僕には、そう見える」

「…………」

「エレインであったレイン。それで良いだろ」

エレインは過去の自分。レインは今の自分。アルはそう告げた。

「……私は、レインでいていいの?」

「王族に戻りたいなら、エレインと名乗ればいい。……でもな、お前はきっとそれを望んでないだろ。……お前が今一番大切なのは何だ?……何のためにここに来た?」

自分が今、すべきこと。ここに来た理由。

姉の死の真実を知ること。そして、この国の真実を知ること。

「お前のやるべきことは、お前が良く知ってるだろ」
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