龍使いの歌姫 ~神龍の章~
神龍が消滅してから、数十年の時が過ぎた。

『ピギャァ!』

『……だから、そうじゃないだろ?……いいか、「レオン」』

『パピー!』

我が子に言葉を教えているゼイルは、中々言葉を覚えてもらえず、悪戦苦闘していた。

『違う!』

『ただいま』

『お帰りティア。兄貴達は元気そうだったか?』

ゼイルが、帰って来た伴侶に声をかけると、ティアは頷く。

『……そっか。二人の子供にも会いたかったけどな……』

レインは、龍と人間の生きる場所を分けたのなら、自分もそうしなれけばならないと、龍の谷をアルと共に出た。

『でも、ずっとじゃないのよ。いつか、人と龍が一緒に暮らせる日が来るもの。その時に、また再会すればいいの』

前よりも体が大きくなり、喋り方も大人びたようなものへ変わったティアがそう言うと、ゼイルは頷く。

もしかしたら、それは遠い夢かもしれない。

それでも、その夢があるからこそ、生きようと思える。

『マミー!』

『お母さんでしょう?』

まだ飛ぶことが出来ない我が子を、ティアは鼻でつつく。

レインも、自分を育てていた時、こんな気持ちだったのだろうか?

(……レイン。私は貴女の娘で、本当に良かったの)

心の中で、ティアは呟いた。

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