龍使いの歌姫 ～神龍の章～

「龍の卵は、オスとメスが夫婦になると、神様から祝福を受けて、自然に体の中に卵が出来て、それが体の外に出て、その後、卵から赤ちゃんが出てくるの。だから」

嫌な予感を感じながら、アルとゼイルは話を聞いている。

「人間の赤ちゃんも、夫婦になると、自然に生まれるんだよね！」

生まれるまでの過程、つまり生まれるのに必要なあれこれは見事はしょられていた。

神様の授かり物とは言うが、やらなくてはいけない行為というものがある。

それ以前に、夫婦になる前に、必要なあれこれもある。

それを、レインの教科書からすっぽ抜かした、今は無き師匠(死んでないが)に、アルは怒りを覚えた。

それを知らなければ、恋愛や求愛を知らなくて当然だ。

つまり、どうやってつがいになるのかも分かっていないのだから。

「お前の師匠、見付けたらちょっとはっ倒す」

「え？何で？」

『まぁ、落ち着けよ兄貴。取り敢えず、姉貴に分かりやすく言うなら、繁殖期ってのは、求愛する期間だな。いや、婚活の方が分かりやすいのか？』

婚活ほど、この国の人間に分かりにくい言葉は無いだろう。

「？？」

案の定、レインの頭は疑問だらけでついていけない。

『誰か、人間の女でそう言うこと教えてくれる人いたらいいな。……じゃないと、兄貴は片思い&一生ど―』

「黙れ」

『ギャァァァァァァァ！！』

ゼイルがボソッと呟いた言葉が聞こえたアルは、最後まで言い切られる前にしばき倒した。

「ゼ、ゼイル？大丈夫？！……もう、アル？何でゼイル 叩いたの？駄目って言ったのに！」

腰に手を当て、レインは眉間に皺を寄せる。先程の話は聞こえてなかったようだ。

「………」

『だ、大丈夫だ姉貴。………それより、話がだいぶ反れたけど、つまりおいらはどうすればいいと思う？』

途中からレインの、恋愛観やら何やらに反れてしまったが、元の話はゼイルのことだ。

分かる人には分かるだろうが、ゼイルはティアに恋をしてると言うことだろう。

龍は本能だけで生きる獣と違い、感情表現は人間に近い。ただし、知能の高い龍に限るが。

ゼイルは龍族の中では。長老の次に魔力と知能が高い。

龍族の次期長候補とも言われている。