血潮燃ゆーー月よ、星よ、我が祈りを聞け!
胸元のアクセントになればと、少し気取ってジュエリーボックスから、十字架のペンダントを選んだ。

ジュエリーボックスには他にも十字架があった。

少年が胸元に首から下げたのと同じ、10ミリほどの数珠を繋いだ銀製の十字架は、ずしりとした重みも感じられた。

泣いていたという自覚はない。

花火大会の途中で、ふと対岸に目を止めた後、一緒に来た友人たちの声も花火の音も花火大会の賑わいも聞こえなくなった。

自分が城跡に立っていることに気づいて、怨嗟の念を感じた途端、衝撃で動けなくなった。

足元からの冷気とゆっくりと立ちこめる靄で歪んでゆく景色の中、業火に燃え盛る城と民衆を率いて勇敢に、猛り狂う炎に向かってゆく若い少年の姿を見た。

「あっ!」

叫んだ時には、辺りは漆黒に染まっていた。
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