オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「おじゃまします……」
『どうせなら夕飯も食べてって』と誘われ、スーパーで食材を買ってから訪れた松浦さんのマンションは、どう見ても頭に〝高級〟の文字がつきそうで、まず外観で圧倒されてしまった。
『単身者向けの間取りで、部屋数も少ないから家賃もそこまで高くないよ』と、松浦さんは、〝高級に見えるだけだよ〟というようなことを説明していたけれど、でも普通のアパートとはやっぱり違う。
エントランスも集合ポストも、エレベーター内も、シンプルだけど洗練されている印象で、とても綺麗だった。
そして案内された六階の角部屋。まず、カードキーに驚いてから、なかを見て再度驚く。
松浦さんの言っていたとおり、部屋の数はないのかもしれない。けれど、入った途端、目の前にひとり暮らしとは思えないほどの広い部屋が広がっている。
濃いブラウンのフローリングのリビングダイニングは、二十畳近くあるんじゃないだろうか。
奥1/4ほどがステップフロアになっていて、そこにアイランドキッチンと背の高い椅子が置いてあった。大容量の冷蔵庫も見える。
手前の広いフロアには、大きな皮張りの黒いソファとテレビが距離をとり向かい合うように置いてあり、その間には天板がガラスでできたローテーブル。
床には、グレイの地に黒い波のような模様の入ったラグマットが敷いてある。
部屋の隅には、背の高い観葉植物まであり……悔しいけれど、そのオシャレさに松浦さんっぽいなと感じてしまった。
いかにもこういう洒落た部屋に住んでいそうなイメージだ。
「どうぞ」と、スリッパを出してくれた松浦さんにお礼を言ってから部屋に上がる。