オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき

「俺と仲良くしていれば、加賀谷さんに気にかけてもらえるよ。俺って女関係、悪い噂しかないから、そんな俺に近づかれてたら世話焼きの加賀谷さんは友里ちゃんを心配してくれる。
まぁ、ベタではあるけど悪くはないと思うけどなぁ」

十中八九、松浦さんは私の片想いに気付いている。

社内ではほとんど接点のない松浦さんが、どうして気付いたのかは疑問が残るけれど……私の勘違いではなさそうだった。

……気付かれている。

それでも素直に認めるわけにはいかず「なんの話をしてるんですか？」と目を逸らしても、松浦さんは引かなかった。

「いい案だと思うんだけどなぁ」

笑みを含んだ瞳がちらりとこちらを見る。

「それとも、そんなずるいことしてまで手に入れたくないとか言いだす感じ？　所詮、恋愛なんてお互いにどっかしら騙し合いながらしていくもんだよ。
始まりはずるくても、恋人になってから関係をつくりあげればなんの問題もない。きっかけなんてなんでもいい。あとで笑い話にできるくらいの仲になればいいってだけの話」

そう一気にたたみかけたあとで、わざとらしい笑みを作り私に向けた。

「あー……でも。もしかしたら、友里ちゃんには難しすぎたかな」

もう、ここまできたら名前で呼ぶななんていう言葉はでてこなかった。呼び方なんてどうでもいい。

自分が冷めた見た目に反してすぐムッとなる性格だとは知っているだけに、気持ちを落ち着かせるよう息を逃がす。

さっきはうっかり挑発に乗ったせいでこうして話すことになってしまったけれど、また同じ手に引っかかるほど単純じゃないつもりだった。