オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
スウェットの伸びた首元からは、男性らしい喉仏と……その下には鎖骨が見える。しっかりとした幅のある肩は、頭痛と熱がツラいせいか、私よりも速い呼吸で上下していた。
なんだか、ものすごく……ものすごく、イケない部分を見てしまった気がしてきて動転する。
片想いしているひとの部屋にふたりきりで、しかも加賀谷さんは思いっ切り部屋着でベッドに腰掛けている……という状態が急に恥ずかしくなり、バッと俯く。
弱っている加賀谷さんが、表情も服装も雰囲気もすべてが無防備なせいで、心臓がうるさいくらいに鳴り響いていた。
加賀谷さんは体調がものすごく悪いっていうのに、本当は呼びつけたくなんかなかったであろう私なんかに頼みごとするくらいにツラいっていうのに、浮かれた音を弾きだす胸が不謹慎に思えて顔を合わせられない。
「篠原?」
私がずっと俯いて黙ったままだったからか、不思議そうな声で呼ばれる。それでも目を合わせることはできずに、下を向いたまま口早に言う。
「私、帰りますね。ひとりのほうが気も身体も休まるでしょうし。あの、薬、十分もすれば効いてくるそうなので様子見てください。もし効かなくても、次飲むまでには四時間から六時間間を空ける必要があるそうなので、それを忘れないでくださいね」
薬剤師さんから教えてもらったことをバーッと並べ立ち上がる。
こんな不純なときめきを抱えたまま、いつまでもこの部屋にいるべきじゃないと、加賀谷さんの顔を見ることもせず背中を向けたとき……後ろから手を掴まれ驚く。
この部屋にはふたりきりだ。考えるまでもなく、それは加賀谷さんの手で……だから、動揺してしまう。