オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
十二月、第三週目の金曜日に行われた忘年会への出席人数は四十人を超えていた。
出席者の八割以上が男性社員ということもあってか、会が始まって一時間もした頃には、そこら中が酔っ払いだらけだった。
飲み会独特のテンションに、アルコールを一滴も飲んでいない私は到底ついていけず、やっぱり出席しなければよかったという後悔に既に襲われていた。
「大体さぁ、最近のスーパーは可愛げがないんだよ。売り込み行ったってこっちが赤字になるような価格でしか買い取らないとか言うし。で、なんとか頼み込んで二円上げてもらって帰ってきたら部長は、〝そんな価格で契約してきやがって〟みたいに怒るしさぁ……もう俺、どうすりゃあいいんだよって感じで」
こあがりの和室の端っこの席で、隣に座ったよく知らない男性社員の愚痴に適当に相槌を打つ。
本来なら、六畳ほどの和室が四部屋並んでいるらしいけれど、今日は貸切ということで、部屋を仕切る襖は完全に取り払われ、横に長い大部屋となっていた。
並ぶ料理は、和食から、ホームパーティでよく見るようなメニューまでバラエティに富んでいて、どれもおいしい。
ふたつ向こうのテーブルでは、加賀谷さんが同僚と楽しそうに飲んでいる姿がある。第二品管メンバーは同じテーブルにならないような配置で座っていた。