オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
お店に入ると同時に「女性で固まられちゃうと寂しいから」と、勝手な理由で離されてしまった工藤さんは、こちらも知らない男性社員に両脇を囲まれながら黙々と食べている。
工藤さんがあまりに無愛想だからか、両脇の男性は若干笑顔を引きつらせているみたいだった。
私も、工藤さんに負けず劣らず無表情を貫いているっていうのに……。
「俺、すっげー可哀想でしょ? 営業なんかさ、結局なにやったって営業先と自社との板挟みになるんだよ」
隣に座る、営業部らしい男性は、笑顔を引きつらせるどころか、話をやめる気もなさそうだ。
私が返した相づちなんて〝へぇ〟〝そうなんですか〟の二種類くらいだ。
自分で言うのもおかしいけれど、こんな愛想のない私相手に、よく気持ちがめげないなぁと、ウーロン茶を飲みながら眺めていると、バチッと視線がぶつかった。
途端、にこー!っと眩しいくらいの笑顔を向けられ、そろそろと目を逸らす。
「でも、今日ここ来て普段のストレスも吹っ飛んだわー。第二品管の篠原さんって言ったら、結構男の間じゃ有名なんだよ。可愛いって。そんな子と並んで飲めるなんて俺ラッキーだなぁ」
「……そうなんですか」
「ちょっと態度が悪……じゃなくて、冷た……でもなくて。えっと、なんていうかクールすぎる?みたいなことも聞くけどさ、俺的には全然オッケー。そっけないくらいの方が好き」
だいぶ気を遣ってくれた様子の男性に、何度目かわからない「そうなんですか」を返していると、テーブルの下の手が不意に握られた。
折りたたんだ膝の上に置いていた手を上から握るのは、言うまでもなく隣に座る男性で……驚いて見ると、意味深に目を細められる。