オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


なんの音もしない静かな部屋。
秒針の音がやけに大きく聞こえる。

松浦さんの瞳の熱量が急に溢れた気がして、ドッと戸惑いが私を支配した。

私を押し倒した体勢のまま、片手の指の背で頬を撫でられ肩がすくんだ。

なおも見つめてくる瞳に、特別な甘さが込められているんじゃないかと錯覚してしまったせいで、顔が熱い。

「友里ちゃんは、なんだかんだ言いながらもドライになりきれないっていうか、優しい部分が出ちゃうから、俺が酔えば、きっとここにきてくれると思ったんだよ。思った通りだった」

「なんで……」
「ふたりきりになりたかったから」
「だから、なんで……」

だって松浦さんは私を避けていたはずだ。なのに、どうして酔ったふりまでして私とここでふたりきりになりたかったのかが分からない。

じっと見上げている私を見て目を細めた松浦さんが、頬を優しく撫でながら答える。

「あんな可愛い怒り方されたら、堪らない」




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