オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
『よくできたね。えらい』
担任の先生に褒められたとき、感じたことのない嬉しさが湧きあがった。
褒められると、認められたみたいで嬉しかった。それまでは見つけられなかった存在意義がそこにある気がして、だから勉強も部活も必死で頑張った。
褒められたくて。
認められたくて。
――選ばれたくて。
「あんな可愛い怒り方されたら、堪らない」
白くきめ細かい肌を指の背で撫でると、彼女はくすぐったそうにわずかに震える。
その姿をずっと眺めていたい衝動に駆られるのだから、これはもうそういうことなんだろう。
――あの日。
友里ちゃんが加賀谷さんからの呼び出しを優先したあの日。ショックだった。
ドタキャンされたからでも、友里ちゃんが加賀谷さんを優先したからでもない。ショックを受けたのは、背中を向けた彼女を止めてしまった自分自身にだった。
損得勘定も駆け引きもなにもなく、ただ行かないで欲しいと……気付けば、本能で動き、彼女の腕を掴んでいた。
そんな自分の行動が信じられずショックを受けた。
勝負とか関係なしに自分以外の男のところに行かせたくないなんて、今まで一度だってなかったことだ。
だから、少し時間が欲しかった。考える時間が。自分の気持ちと……向き合う時間が。
自分のなかで生まれた感情を、どこに収めることもできないまま友里ちゃんと向き合っても、きっと困惑してうろたえるだけだ。
冷静になれずに傷つける言動をとってしまうことだけは避けたい。
一見冷たい彼女が、本当は優しく繊細だということを俺はもう知っているから。
だから……会いたい想いが募るなか、耐えてきたのに。