オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「ごめん。俺も好きだ」
抱き締めた彼女の耳元で告げる。
切羽詰まったような声になったけれど、構っていられなかった。
心臓はずっと押さえつけられたように苦しいままで、恋愛感情ひとつでここまで影響がでるのかと驚くほどだった。
他のやつらは、こんな大きな感情を何度も失ったりしているのにまだ繰り返すのか……と考えると頭が上がらない思いだった。
友里ちゃんにならいつか裏切られてもいい、なんて考えていたけれど、やっぱり嫌だと考え直す。
そんなショックに耐えきれる自信はない。
どうかこのまま友里ちゃんが一生俺を好きでいてくれるようにと願いを込めながらギュウッと抱き締めていると、彼女が俺の背中に手を回した。
「……だと思ってました」
「俺が、友里ちゃんを好きだって気付いてたってこと?」
友里ちゃんは俺の肩に顔を埋めたまま答える。
「だって松浦さん、私に甘すぎるから。でも、勘違いだったらどうしようって不安だったから、そうじゃなくてよかった……」
最後、消え入りそうに言った友里ちゃんに、どうしょうもないほど胸が締め付けられる。
彼女に俺ができることは、どれくらいあるだろう。
今までもらったぶん、しっかり返せるだろうか。
〝一番〟に拘り、欲しがってばかりいた俺が、友里ちゃんになんでもいいから与えたい衝動に駆られるのだから笑ってしまう。
でも、それが紛れもない本音だった。
「幸せにする」
告げたあと、しばらくしてから「……少し飛びすぎか」と付け足すと、腕のなかからクスクスと楽しそうな声が聞こえてきた。
「不束者ですが……って返せばいいですか?」
「いつか、もう一度俺がプロポーズしたときにはそう返してくれると嬉しい。断られたらたぶん、ショックで生きていけない」
ふふ、っと柔らかい笑い声を聞きながら続ける。
「その前に、まずは――」
まずは。
一緒に朝ごはんを作って食べようかと誘うと、友里ちゃんは嬉しそうに微笑みうなずいた。