オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


先月の週末、外で待ち合わせて出かけようってなったとき。待ち合わせ場所で、男性に道を聞かれているところを松浦さんに見られたときは、そこから三十分くらい不機嫌だった。

ただ道を聞かれただけだと言っても、『あれは下心あったよ』と言って聞かなかったし。

バレンタインに、部署の女性社員合同で男性社員にチョコをあげると言ったときも、おもしろくなさそうにしていた。

そんなことを言いだしたら、松浦さんが誰彼構わず振りまいている愛想のほうが問題あるように思えるのだけど……とくにそれは伝えていない。

〝愛想がよくて、なんだってなんでもない顔で交わしてしまう、外用の松浦さん〟ではない、本当の姿を私には見せてくれているのかなと思うから。

案外子供っぽい部分も、嫉妬深い部分も、怒るどころか嬉しいと感じてしまっているのだから私も大概なんだろう。

「で? その松浦さんは、今日は誰と回ってるの?」

カフェオレに刺さったストローで氷をガチャガチャかきまぜながら聞かれ、首を傾げる。
バスでは一緒だったけれど、ここについて外に出た途端、女性社員に囲まれていたから、そこからどうなったかは知らない。

私は、工藤さんと一緒に入園してしまったから。

「女性社員と回ってるんじゃないですか? 声かけられてましたし」
「……まぁ、篠原がいいならそれでいいけど。ずっと関係は内緒にしておくつもり?」

わずかに納得いかなそうに眉を寄せた工藤さんにうなずく。

「そのほうが、お互い仕事もしやすいですし」
「でも、その場合、松浦さんは女性社員に言い寄られたりするじゃない。篠原はやきもちとかないの?」

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