オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「女性社員がキャーキャーって……だって、うちの部署にいる騒ぎそうな年代の女性社員って篠原さんと工藤さんくらいですもん。
おふたりは男見てキャーキャー言うような熱なんて持ってないでしょ」
「……ああ。言われてみればそうかも」と、納得したのはそれまで黙っていた工藤さんだった。
でも、たしかに麻田くんの言う通りだ。
うちの部署は九人の社員がいるけれど、出勤しているのは女性社員は私と工藤さんだけだ。
それに、第二品管と関わる部署にも二十代三十代の女性社員はいない。
第二品管は結構狭い範囲にしか関わりを持たないから……麻田くんが企画事業部の松浦さんを知らなくても当然かもしれない。
男性は女性ほど噂話に花も咲かせないだろうし。
加賀谷さんと麻田くんが雑談しているのを聞いていても、ゲームの話や野球の話といった、仕事には関係ない話ばかりだ。
男性社員同士ってなると案外知らないものなのかもしれないな……と納得していると、麻田くんが別の疑問を投げかける。
「それで、女性社員に人気な松浦さんがどうして俺の隣に?」
もっともな疑問に、工藤さんがちらりと私を見たのが視界の隅でわかった。そして……松浦さんがにこっと営業用スマイルを浮かべたのも。
「実はそこに座ってる友里ちゃんと友達でね。見かけたからつい話しかけちゃったんだけど……もしかして迷惑だったかな」
よく言うな、と思う。内心、〝俺と一緒に食事できるなんてついてるね〟くらいに思ってるだろうに。
「いえ。アドバイザーは多い方がいいので!」
麻田くんが、松浦さんと向き合うように体勢を変える。そして「アドバイザー?」と片眉を上げる松浦さんに「聞いて欲しい話があるんです」と力強く話し出した。