オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
ひとり暮らしってことは、掃除や洗濯だって自分でしなくちゃならない。
個人的に、一番サボれるのが料理なのに、そこをしっかりしているってことは、他ももしかして……と思い聞くと、松浦さんは出し巻き玉子を食べながら苦笑いを浮かべた。
「完璧ってわけじゃないけどね。掃除とか洗濯とか……あとはアイロンくらいなら面倒には思わないかな」
「……アイロンなんて、一応買ったもののクローゼットの奥にしまったままです」
カミングアウトすると、松浦さんはおかしそうに「友里ちゃんはズボラなタイプかー」と笑うから、否定はせずにひとつ息をもらした。
「外見だけでもモテるのに家事までこなせるんじゃ、オチない女の子なんていなそうですね。
部屋行ったらピカピカで、しかもおいしい手作り料理なんか出てきたら、悔しいけどイチコロっぽいし」
つけあがらせるだけに思えるから口にはしないけれど、松浦さんは気遣いもできる人だ。
このお店に来てから、私が話しやすい雰囲気を作ってくれているし、料理だってちょうどいい時に取り分けてくれるし、空いたお皿もすぐに片付けてくれる。
そういう気遣いは、女の子をオトすためにしているんだとしても感心するほどだった。
外ではこんな風に至れり尽くせりで、部屋に行ったら行ったで家事までできてしまうんだから、きっと本人が言うように、女の子をオトすのなんて簡単なんだろう。
松浦さんを毛嫌いしている私でさえそう思ってしまうのだから余程だ。
だから呆れて笑っていると、私のお皿に出し巻き玉子を置いた松浦さんは「いや、女の子は部屋には入れないよ」とキョトンとした顔で答えた。
「え……なんでですか?」
「信用していない相手なんて普通部屋にはあげないでしょ。だから」
当たり前みたいに言われ、面を食らってしまう。だって。
「じゃあ、なんのために家事してるんですか? 単純に好きとかそういう……?」
てっきり、ポイント稼ぎのためだと思っていただけに驚いている私に、松浦さんは「なんのためって……」と笑みを浮かべながら眉を潜める。