オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
私はただ食べていただけだけど、松浦さんはメニューを決めて注文を済ませて、私のグラスやお皿の空き具合を確認して、その上、私の好みまで探っていたのか。
今日誘ってきたのは松浦さんだし、松浦さんがどんなに気疲れしたところで自業自得だとも思うけれど……それでも、大変だなという感想を持ってしまう。
とてもいい接待でも受けている気分だ。
松浦さんの恋愛の仕方は嫌いだけど。顔のよさに胡坐をかかずに努力している姿を見たせいで、最初の印象とは少し違ってきていた。
だからといって、松浦さんのしていることに納得も理解もできないけれど。
「友里ちゃんが告白したのっていつ頃?」
ジンジャエールを飲んだ松浦さんに聞かれ、チーズケーキをフォークで切り分けながら答える。
「半年くらい前です」
「それ、ちゃんと加賀谷さんにも伝わってるの?」
疑うように聞かれ、苦笑いを浮かべてうなずいた。
飲み会帰りのタクシー車内での告白を説明したあと、「本当は言うつもりなんてなかったので、自分でもびっくりしました」と自嘲するように笑ったけれど、松浦さんは真面目な顔をしたまま聞いていたから、チーズケーキをひと口食べたあと続ける。
「翌週の月曜日、朝呼び出されて返事をされました」
朝、出勤してバッグを置くために更衣室に向かおうとしたところを呼び止められたから、加賀谷さんはきっと私を待っていたんだろう。
フロアの一角にある会議室で、返事を告げられた。