オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
『俺も篠原のことは可愛く思ってるし、もちろん好きだとも思う。……でも、篠原の言う〝好き〟は俺のとは違うってことだよな? 〝恋愛〟としてってことだよな?』
『……はい』
ブラインド越しの朝日が差しこむ会議室は、まるでいつもとは違う空間みたいだった。
ドアの前に私、そしてそこから数メートルほど中心に進んだところに加賀谷さんが立っていて、向き合うカタチだった。
緊張を感じながらもうなずくと、加賀谷さんは少しだけ言い淀んだあと口を開く。
『だとしたら、悪い。そういう風には見たことがない』
多分、そうじゃないかとは思っていたけれど、それでも結構ショックで気が遠くなりそうだった。
下唇をキュッとかんで、それぞれ下したままの手をきつく握りしめて、泣くな泣くなと自分に言い聞かせた。
『ありがとうございます。スッキリしました』
ひとつ息を吐いてから、加賀谷さんに笑顔を向けた。
『こういうことで関係が気まずくなったりするの嫌なので……わがままですけど、今回のことはなかったことにして、これからも今までみたいに接してもらえませんか? ……職場の同僚として』
お願いした私に、加賀谷さんはホッとしたような表情をしてうなずいてくれた。
『俺もそのほうが助かる。ありがとな、篠原』
――それが、半年前のことだ。
一連のことを説明し終えてから……ふっと笑みをこぼす。