オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


「麻田の言う通り、俺たちに相談されたところでどうにもならない。だから悪いけど……」

「ええー、そこを同期のよしみでなんとかしてくれない? 私も上から言われて仕方なく受けたんだけど、こういう案件ってどこの部署で担当してくれるのかわからないんだもん」

コテッと頭を傾けた金子さんを目の当たりにして、思わず工藤さんと目を合わせる。

〝イライラするでしょ〟とでも言いたそうな眼差しに小さくうなずいていると、麻田くんが顔を寄せて耳打ちしてきた。

「第一倉庫にすずめが入っちゃったんですよ。それで、出て行かせようにも、あそこ天井高いし鳥相手じゃどうにもできなくて、加賀谷さんに相談しにきてるんすけど。絶対にうちの仕事じゃないですよね」

「すずめ……」

だからさっき、二重シャッターがどうのって話をしていたのかと納得する。

完成した商品を運び出すまで置いておくのが倉庫で、その入り口は二重シャッターになっている。
一枚がきちんと閉まらないと次のシャッターが開かない仕組みにしているのは、虫や鳥、猫などが入り込まないようにだ。

それにも関わらず入り込んだのは、人的ミスなのか、それともすずめが賢かったのか。どちらにしても、フンでもされてしまったら大問題だしすぐに解決しないとまずい。

でも……麻田くんが言うように、間違ってもうちの仕事ではない。

大体、この金子さんって人もうちの部署が担当することじゃないって分かってるだろうに、ただの同期だからって加賀谷さんを頼るのは甘えすぎなんじゃないだろうか。

そんな不満を持ちながらチラチラ見ていると、加賀谷さんが困ったような表情を浮かべたところだった。


< 63 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop