オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
十一月も後半になった空は、十八時半でももうどっぷりと暗くなっていて、夕日の名残はどこにも見つけられなかった。
冷たい風が頬をかすめていくから、マフラーを口元まであげる。
「さすが、モテる男はマメですね。今までそうやってターゲットにした女の子をオトしてきたんですか?」
「どうだろう。知りたい?」
色気が含まれた瞳に問われ、すぐに「ちっとも」と答える。すると松浦さんは楽しそうに笑った。
カラッとした笑みからは、今まで浮かんでいた妖しい色がなくなっている。
「俺のこと好きにさせるためなら、できる限りケアはするよ。マメな男は好感持ってもらえるしね。でも、今日のこれは違う。ただ、友里ちゃんと友達になろうとして頑張ってるだけ」
じっと見上げていると、にこっと目を細められる。
「友里ちゃんって真面目だし、段階踏まずに友達にはなってもらえなそうだから。とりあえず、一緒に帰ったり飲んだり食べたりして、共通する話題とか時間を増やそうかなって狙い」
こうして待ち伏せされていても、もうそれほどの警戒心は持たなくなっていた。
先週の金曜日、一緒に飲んだあと、松浦さんは意外にも紳士的に家まで送り届けてくれたし、終始、下心なんて見せなかった。
そこがなんとなく腑に落ちないでいたのだけど、どうやら、本当に〝友達〟になろうとしているらしい。
ガンガンこられても迷惑だけど、私をターゲットにして遊ぼうとしているくせに、こんな悠長に友達から始ようとしているなんて、大丈夫かなと若干の心配さえ感じてしまう。