不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 こうなったらいちかばちか下へ飛び降りようと、自分の後ろへ視線を走らせる。

 ジリアンは右手を横に上げた。

 すると、その者たちは出てきたところで足を止める。どうやら彼の命令には絶対服従のようだ。言葉がなくても従う。

 ――動作一つで……。当主だから? 公爵だから、かな。

 彼はまゆこをじっと見て床に片膝を突いた。

 礼を取ったという姿にしか見えない。身長があるといっても、この体制なら彼女の目線より頭が下がった。

「ジリアン様っ。あなた様がそのようなことを」

 咎める声が上がった。

 そちらを見ると、ブラウンの髪を後ろで一つに括った青年が一歩前へ出ている。

 二十代後半だろうか。ジリアンと同じような年齢だ。羽織っているのも黒ではなく白色だった。他の連中よりは地位が高いのかもしれない。
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