不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
魔法使いが呪文を唱えて魔法陣が浮き上がり、力や大きさや外見が違う精霊たちがたくさん出てきた。化け物もいれば、善悪に分かれているときもある。

 いま自分は、〈召喚〉の魔法で呼び出された当事者ということだろうか。

「冗談……。〈ビックリ〉……じゃないの?」

 身体が揺れる。目の前がちかちかとした。

 ――あれ? 貧血? ラボの定期検診では大丈夫だったのに。

 目に映る情景がぐらぐらと揺れたが、揺れているのは彼女自身だった。

「マユコっ」

 ジリアンが腕を伸ばすのが見えた。離れていたところにいたルースも走ってくる。

 ルースが大きな声で言う。

「異世界からの渡りには極端に体力を消耗します。ジリアン様、ゆっくりです。マユコ様は歩けないでしょうから私が運びます。治癒魔法は私が……」

「私がやる。ルース。マユコの部屋の用意をしろ」

「は、はい」
< 20 / 360 >

この作品をシェア

pagetop