不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
まゆこの周囲を柔らかな光が包む。
彼女は、遠い山々にいる樹木の兄弟たちに願った。
この木々たちを、助けて――
片手を幹に当てている。片手で持っていた白いマフが地面に落ちた。
「こ……、これは……っ」
ルースが感嘆の声を上げるが、まゆこは気付かない。
円筒形の白い毛でおおわれた帽子から出ていたゆるふわの髪が浮き上がる。
強い風が吹いたわけでもないのに、明るい光で包まれたまゆこのコートもドレスも靡いた。
意識が空気に溶けてゆくようだ。
願い。魔法陣は必要としなかった。
動かない〈時〉の中に捕らわれてしまっていたブナの葉がみるみる紅葉してゆき、そして散り始める。
ヒイラギの花が咲いてゆく。白い花は、雌雄異株であるのを示すように形が違う。花は散り、やがて来る春を過ぎれば実をつけるだろう。
実がなくては、次へと繋いでゆけない。木々たちが次へ行くだけの力まで奪っては、死に体になってしまうのも無理はなかった。
彼女は、遠い山々にいる樹木の兄弟たちに願った。
この木々たちを、助けて――
片手を幹に当てている。片手で持っていた白いマフが地面に落ちた。
「こ……、これは……っ」
ルースが感嘆の声を上げるが、まゆこは気付かない。
円筒形の白い毛でおおわれた帽子から出ていたゆるふわの髪が浮き上がる。
強い風が吹いたわけでもないのに、明るい光で包まれたまゆこのコートもドレスも靡いた。
意識が空気に溶けてゆくようだ。
願い。魔法陣は必要としなかった。
動かない〈時〉の中に捕らわれてしまっていたブナの葉がみるみる紅葉してゆき、そして散り始める。
ヒイラギの花が咲いてゆく。白い花は、雌雄異株であるのを示すように形が違う。花は散り、やがて来る春を過ぎれば実をつけるだろう。
実がなくては、次へと繋いでゆけない。木々たちが次へ行くだけの力まで奪っては、死に体になってしまうのも無理はなかった。