不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
倒れてゆくところをジリアンに抱き留められる。そして、横にして抱き上げられた。
彼の胸元に引き寄せられると、速い鼓動音がわずかに聞こえる。
なにがあっても動じなさそうな人に見えたが、鼓動が早くなることもあるのかと、思わず耳を寄せた。
――異世界からの渡り……。ウィズ世界からすれば、わたしがいた方が異世界になるわけか……。
ジリアンの端麗な顔を見上げる。
彼の両目がこちらへ向くと、底の見えない紺碧に呑み込まれそうな錯覚を覚えた。
冗談です、とか、間違いでしたとか、ビックリでーす、とか……ないの。
さまざまな可能性を考えたが、彼の瞳を覗き込んだときにこれは現実なのだと実感した。まゆこは瞳を閉じてゆく。
一度は『痴漢!』と糾弾した相手にこれほど無防備に己を任せていいものだろうか。しかし、もうなにも考えられない。
「マユコ……。眠っていいぞ。ゆっくり休め。目が覚めたら私の話を聞いてくれ」
彼に名前を口にされると、身体の内側が震えるようになる。
怜悧さが際立つ外見や動きをしているのに、不思議なほど優しく感じられる声に包まれて、まゆこは意識を手放した。
彼の胸元に引き寄せられると、速い鼓動音がわずかに聞こえる。
なにがあっても動じなさそうな人に見えたが、鼓動が早くなることもあるのかと、思わず耳を寄せた。
――異世界からの渡り……。ウィズ世界からすれば、わたしがいた方が異世界になるわけか……。
ジリアンの端麗な顔を見上げる。
彼の両目がこちらへ向くと、底の見えない紺碧に呑み込まれそうな錯覚を覚えた。
冗談です、とか、間違いでしたとか、ビックリでーす、とか……ないの。
さまざまな可能性を考えたが、彼の瞳を覗き込んだときにこれは現実なのだと実感した。まゆこは瞳を閉じてゆく。
一度は『痴漢!』と糾弾した相手にこれほど無防備に己を任せていいものだろうか。しかし、もうなにも考えられない。
「マユコ……。眠っていいぞ。ゆっくり休め。目が覚めたら私の話を聞いてくれ」
彼に名前を口にされると、身体の内側が震えるようになる。
怜悧さが際立つ外見や動きをしているのに、不思議なほど優しく感じられる声に包まれて、まゆこは意識を手放した。