不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 半分以上眠っている状態で記憶の奥底をさらう。一瞬にも満たない間に四角の影を見ていた。

 迫ってくる。狭い道だったが、かなりのスピードを出しているようだ。

「う、ん、……っ」

 ほぼ同時に異世界への口が開くはずが、ライトに照らされたままだ。

 ぐんっと大きくなった影がすぐそこに。

「きゃぁあ……っ」

「マユコっ」

 揺り動かされて目を開ける。ジリアンが寝ている彼女の両肩を掴んで揺さぶっていた。まゆこは額に汗の粒を浮かせ、速い息遣いを繰り返している。

 ぼんやりとしたまなざしでジリアンを見上げた。
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