不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「どうした。夢か? マユコ、私が分かるか?」

「……あ、ジリアン……?」

「そうだ。悪夢でも見たのか? 魘されていた。すまん。声が聞こえたので、こちらに入ってしまった」

 すまなそうに彼女を見てくるジリアンの首に、両腕を掛けて縋り付く。彼はわずかに身体を慄かせた。

 まゆこ自身、身体の震えが止まらないので、彼の様子には気が付かない。

 がくがくと震えて、ジリアンに自分から抱きついている。

「大丈夫だ。私がいる。どんな夢を見たんだ?」

 彼はベッド端に腰を掛け、くっついているまゆこの肩や背中を軽くぽんぽんと叩いて宥める。髪を撫でてくれた。

 ほっとしたせいか、呟きが漏れる。
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