不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ――状況……。ウィズに車はないから、馬車に轢かれそうになるとか?

 夢が本当なら、帰ろうとすればどちらの世界でも生命の危機に陥るということか。

 もっと詳しく聞きたい。けれど今は夜中で、ジリアンは自分の人生をかけた戦いがすぐそこに迫っている。

 ――負担をかけたくない……。

 彼女の意志とは関わりなくウィズへ召喚された。

 しかし、もしも車に轢かれそうになったときに呼ばれているなら、ジリアンは命を救ってくれたことになる。

 彼は、確固たる物言いで断言した。

「マユコ。おまえは私が必ず守る。信じるか?」

 まゆこは彼を見つめて頷いた。

「信じる」

 彼の頭が下がって、彼女の指先に唇が触れる。まゆこは頬を上気させた。

「おやすみ、マユコ」

「おやすみなさい、ジリアン」
< 220 / 360 >

この作品をシェア

pagetop