不本意ですが、異世界で救世主はじめました。

　意識がふわりと上昇する。

　まゆこは瞬きを繰り返す。横になった状態で周囲を眺めた。

　どうやら自分は、広い部屋の奥側に据えられた幅のある天蓋付ベッドに寝かせられているようだ。

「家のベッドでもないし、病院でもない。ここは、別世界……。ホントに？」

　眠ってしまう前にベランダから眺めた眺望は、テレビや映画でも見たことのない絶景だった。風の匂いも、空気の感触も、小鳥の声さえも微妙に違うと感じた。

　どう違うのか問われても具体的な説明はできないが、とにかく、五感すべてが違うと訴える。第六感は、もっとはっきり違う世界だと告げていた。

　ジリアンがまゆこの名前を呼んだときに感じた不思議な感覚は、きっと死ぬまで忘れられない。