不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「……異世界ウィズ? ジリアンがこの世界に引き込んだのなら、理由は彼に訊くしかないわね。すぐに帰してもらわないと。無断で休んだら、首になっちゃう」

 もぞもぞと身体を動かし始めた。

 上掛けとして被せられていたのは羽毛布団だ。軽い。

「天蓋付ベッドなんて、初めて……。お布団を被っていても暑くない。来るときは秋だったから、そういった季節なのかな。季節というものがあれば、だけど」

 独り言を口にしながら、脳内の整理をしている。

 顔を動かしてまず視界に入ったのは、ベッド横にあるサイドテーブルだ。水差しとコップが載った盆が置かれている。

 肘掛のないチェストが一つ置いてあり、その向こうにはソファのセット、さらに向こうに、二脚の椅子と小さな丸いテーブルが見えていた。

 そして、最奥には大きな窓がある。窓から覗いているのは、夕暮れ時の暁の空だ。

 床には厚みのありそうな絨毯が敷いてあり、壁には大理石の大型暖炉が鎮座している。暖炉に火は入っていない。
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